「子どもが面白がる学校を創る」平川理恵・広島県教育長の公立高改革を読んで・・・

 

7月5日上記タイトルの本を読み終わった。
上阪 徹さんが取材し書かれた本である。

その中では、各登場人物が語った言葉が、次から次に出てくる。

即ち、平川さんだけでなく、福山市教育長三好さんや、福山商業高校校長神田さん、をはじめたくさんの生徒達の声等が、生々しく迫ってくる本であった。臨場感があり、知らず知らずの間に、平川さんの思いが随所に入ってくるという本である。熊本市の教育委員会遠藤教育長のことが書かれた「教育委員会が本気を出したらすごかった」(この本を読んで遠藤さんに会いに行ってしまったほどだ)の時も感じたが、現状を示してくれて臨場感と共に伝わってくる本は、非常に面白くワクワクする。

平川さんは、最初、「クリエイティブな校長になろう」で知った。その中で、彼女が横浜の中学で行ってきた、「図書館」「学内フリースクール」などが、そのまま広島の公立校に導入されている様子がよく見える。しかし、それだけでなく今まで考えていたことを、「だって、変じゃない」とどんどん実行に移していくところはとても気持ちがいいほどに感じる。そうした変化の中で、周辺にいる人たちが影響を受け、受けとめ、自分にできることは何かを考え始め、試行錯誤を始めている様子が伝わってくる。

【福山商業高校バージョンアップについて】

ここは、私が、中でも一番興奮してワクワクしながら読んだところである。

商業高校は各地にあり、ほぼどこでも4割〜6割は進学をするのが通常となっている(商業枠入試もある)。しかし、そこには、旧態然としたカリキュラムがあり、資格試験の取得や部活を強調しているところが殆どである。一体何のための資格取得だろう?このことを生徒たちが、どれくらい認識しての資格取得しているのだろうかという違和感をいつも感じていた。しかも大抵の商業高校には、偏差値で輪切りにされ、成績が悪いから普通科にいけないから商業高校に来た。もしくは部活に入りたいから、家庭の事情で、商業高校に来たという生徒が多く見られる。こうした現状に対して、先生方も生徒たちも何らかの限界を、それぞれが決めているような節さえ感じていた。

ところが、この福山商業高校の生徒たちはどんどん成長していき、言うこともどんどん変化していく。しかも、イキイキしてくる。このような生徒の変化を目の前にしたら教員は、すごくやりがい・喜びを感じ頑張れるのではないか。生徒の変化は、教員の動きに一番影響するからである。私も読みながら興奮を抑えきれなかった。
ここで最も注目すべきは、大人である教員同士が必死に考え、「本質的な問い」を考えて、提供していくところである。「生きるって何?」から始まるのである。学校としてのビジョンを明確にし、それに向かい大人が試行錯誤をしていく。その姿勢は、必ず生徒に伝わるものである。ゼロからのスタートを始めた先生方。これを支える平川さん。
印象的だったのは、総務部主任佐藤潤さんの以下の言葉である。
「週に4時間のビジネス探求プログラムを実践したことで、資格試験のために使っていた時間を削った。だが、心配していない。」
「資格試験に使っていた授業時間が使えないわけですから、試験の合格率が落ちるかもしれません。時間がないわけですから。では、どうするか。まだ、対策はできていないです。でも僕は、思っているんです。ビジネス探究プログラムで学びを深めたら、自分でやるようになるんじゃないか、と。自宅学習が増えるということです。これまでは強制的に受けていた子もいた。でも、理想ですけど、自分から学びたい検定を受ける、という流れに切り替えていきたいんです。何年かかるかわかりませんが、こういうことも考えるきっかけをもらったと思っています。」

<平川さんの作戦>
「福山の経済を支える人材を育てる」という目標を明確にする。
子ども達が大人になった時にその彼らの子供に対する教育力もあげれるようにしよう。その子供達も福山市を支えてくれる子供達だから。
教育目標:福山市の20年後を支える市民の育成。商業人として変化する社会に主体的に関わり自己実現していく資質や能力を育成する。
と職員で話し合って決まっていくのである。
現在でさえ、起業家が多い町として、福山市は有名である。

「未来を見ましょう」
の掛け声でアメリカのハイテックハイをはじめとした学校視察と現地の一軒家で行う「振り返りと議論」を行うことで、先生の中にタネが出来上がっていくところなどは、圧巻である(羽田で広島行きの飛行機を待つところでの円陣を作ってみんなで「頑張るぞ!ーお!」と掛け声をかける)。

「ビジネス探求プログラム」
本質的な問い:「どうなるこれからの世の中」「不満から何が見えるのか」「商業高校での学びは何をもたらすか」「人はなぜ働くのか」「お金の価値とは」「AI化でどのような変化が起きているのか」と言った。考えていなかったことを考えてみる。考えて、他人の意見を聞く。そうしたら、また自分の考えが出てくる。表現してみたくなる。発表する。みんなに褒められる。楽しくなる。考えるのが楽しくなると、もっと知りたい、もっと話したいとなる。
ここで最も大きなことは、機会を作り自分を曝け出し、話ができる環境が作られたことににある。平川さんは、「自己認識、自己開示、自己表現がつながった」と言っている。自分が辛かったこと、楽しかったこと教員や生徒がみんな知ってくれて、何を話してもいいんだという、安心安全な環境の創出が一番大きいと思う。生徒がこうなれたと言うことは、教員同士もそうなれたんではないかと思ってしまった。それができている学校は全国ではまだ非常に少ない。

「インテルティーチプログラム研修」
仕組みとしてもこのプログラムを導入した。これは、私が東京にいる頃2011年。埼玉県で高校教員のために、東大の故三宅先生も入って(県教委にいた、会った当時は浦和高校の校長だった)関根さん(のちの埼玉県教育長)が全国で最初に仕掛けたものであった。
これにより、「本質的な問い」の教員への定着を推進して行った。これも1週間のプログラムをオンラインで3日に短縮して行っている。
この話を読んだ時に、先の松山において、京大の西岡先生と話した、教科における「本質的な問い」「生徒に永続的に理解させたいこと」という話と同じだと感じた。西岡先生もこれを教員が乗り越えることが1番の大きな壁だと言われていたのと一致する。

【著者上阪徹さん あとがき】

「広島での教育が大きく変わり向かっているところは、一つの物差しではなく多様な価値を認めようとしている取り組みで、日本の閉塞状況を変える起爆剤になる。願わくば、このうねりが多くの件で起きて欲しい。もっと本質的な問いを、本質的な価値を、教育現場に持ち込んでほしい。」・・・という現場を見た人だからこその切実な言葉にも感動した。

そこで、この本を昨日、読み終わってすぐに上阪 徹さんとメールでやり取りをした。やはり私と同じく福山商業高校のくだりが取材していて、一番感動されていたそうである。
そして、「是非広島で起こっていることを多くの方に知ってほしいですとも言われていた。」教育関係者でもない筆者が、「子供達は、間違いなく教育で変わるのです!」とも力説されていた。

上阪さんに、「私は福山に住んでいるので、まず福山商業高校を見に行きます。11月17日には、常石ともに学園の予約がとれました。」「そして全国にこの広島のことを全国に広げていきたいと思いました。」とお伝えすると、更にお礼のメールまでいただいた。こうした大人の気持ちを繋いでいきたい。

【最後に】
今回この本を読み、平川さんの想いに触れていく中で思ったこと。
元々私は、「探究においては勿論、教科指導においても、本質を追求することを考えて欲しい。」ということを、学校に提案してきたが、更にこの思いを強くした。そのために、大人が共同しあって、本質的なものを引き出すための「問い」(本質的な問い)を試行錯誤しながら探究すること。これこそが、探究活動においても教科においてもこれから先最も重要なことだと思う。

後日、福山商業高校の土屋校長先生に会いに行った。印象的だったのは、やはり、「探求なんて」と思っている教員がいたそうである。それが、このプログラムの中で、みるみる生徒が変わっていく様を目の間にすると、そうした教員達も「おっ、いいじゃないか」と変わって行ったということである。教員が変わっていける1番のきっかけは、生徒の変化・成長が見えた時にあるということの核心にあたる部分であった。

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