東山高校を訪問して感じた、「古い歴史と改革に向かう意志」

4月26日、京都東山中学・高等学校を訪問する。

中村憲幸先生と知り合い、いつか是非と言っていた訪問が実現する。先生が行っている、「バディ制度」に興味を持ったからである。

雨が降り頻る中、蹴上駅を降り、googlemapで見ながら道を進むと、煉瓦造りの狭いトンネルがあり、そのトンネルを抜けた先にある小路には、南禅寺を中心とする新緑の中にある落ち着いて趣のある不思議な世界が広がっていた。角を曲がるごとに広がる世界に目を奪われながら歩いた。中でも石川五右衛門が登って「絶景かな」と言ったとも言われる南禅寺三門の風情は、言いようもなかった。その角にある大力邸で、庭を眺めながら、肉ぶっかけうどんをいただき、東山高校を目指す。お寺を抜けて、突然現れる学校が東山高校であった。無数の鯉のぼりが雨に濡れているところを潜ると、澤田寛成先生、中村憲幸先生両名に出迎えていただいた。

今日は、中村先生たちがメニューを考えていただき、
①最初に中村先生・澤田先生・森重先生等と情報交換
②学校内見学
③中村先生の英語の授業見学
④中村先生のクラスにおけるホームルームで「バディ」を決めるところを見学
⑤塩貝省吾校長先生も含めた振り返り

という充実したものであった。

東山高校は、その歴史が150年を超える禅宗をベースとした学校であるにもかかわらず、今の時代に求められるものに向けて果敢にチャレンジをされていた。その姿勢は、非常にかっこいいスタンスだと感じた。中村先生に言わせると「まだまだです。見せられないところもありますが、今日は、存分に見ていってください」とのことだった。

現在、私は元同志社中学教員の青木潤一さんと、マレイシアのサンウェイ大学三年生の中野真泉さんの3人で、「学習する学校」の勉強会をオンラインで行なっており、その内容が日本の学校の中でどのように当てはまり、実際の学校現場においてどのような有効性があるかを具体的な事例を作成し、全国の参加者と議論することをおこなうことで、実践としてどのようなことができるか、そのプロセスにはどのようなことが必要か、というような提案等をしている。その視点で東山高校を見た場合

東山高校でお話ししていただいたことや、いただいた資料を見ると、疑問に思ったことが以下の2点であった。
①この学校の共有ビジョンは何だろうか?明確に言語化されているのか?
②それは、全教職員に具体的に浸透されているか?であった。
資料からは、
①に関しては「変化する社会に対応し、強く・たくましく・幸せに生きる生徒を育む」という言葉になりそうである。
②に関しては今回よくわからなかった。また、お聞きしてみたいところである。
「バディ制度」に関しては、バディ同士が互いに、相手のことをよくするために自分が働くのを日常に取り込んでいる生徒といえるが、これが単独のものでなく、
学校内のさまざまな相手のことを考えて行動することに喜びを見出す行事と連動しているところがいいと感じた。

ピーター・センゲ(システム思考)&ダニエル・ゴールマン(SEL)共著の「21世紀の教育」の中にある、
「相手を思いやる力」というものをどうやって磨いていくかという中に、
基本は、
①自分が何を感じ、それはどのようなもので、なぜなのかを考え
②相手は何を感じ、考えているのかということを理解すること
③そして複雑な社会をどう捉えていくか
の三つをどう育むかということが出てくるが、その中で二人がたどり着いたのが「コンパッション」であり
即ち、「共感を超えた叡智ある思いやり」と言われている。
共感を超えた叡智ある思いやりとは、
「相手の状況を客観的・冷静に理解」
「相手の気持ちに共感」
「相手に幸せになって欲しいそのために助けたいという自然な思いやり」
というものです。
これに似たものが仏教の教えの中にも出てくる。
仏教にいう「四無量心」である。
「慈悲喜捨」

・「慈」…家族や仲間に、苦しみや危険も問題もなく、幸せでいてほしいと願う
・「悲」…相手が落ち込んで苦しんでいるときに、心配に思ったり、一緒にそれを抜け出す方法を考える
・「喜」…幸せに喜ぶ
・「捨」…助け合い、思いやりを持っている良い関係でも、「法」や「道理」に反しているときには、
     冷静になり、一旦立ち止まる
人間には、この「コンパッション」の要素が自然に備わっていると言われている。
教育で必要なことは、「コンパッション」を植え付けようとするのではなく、
もともとある種に水や肥料を与え、育てていくことだとも言われている。
人間が本来持っている素地を呼び覚ますことだ、と言ってもよいものである。
 
このことを、大きな木を描いて澤田先生から説明していただいた。
東山高校の「土台力」にも通じるもを感じ、中村先生がやられてる「バディ制度」の中にも感じた。

実際後日、澤田先生からいただいたメールには、
仏教の「自灯明・法灯明」の教えを本校の教育目標のメインに据えています。
自灯明がセルフ・リーダーシップ、
法灯明が土台力にあたります。セットにしています。
そこで、セルフ・リーダーシップには育成、土台力には「養成」を使うように気を付けています。
そして、セルフ・リーダーシップには「育む」、土台力には「培う」を使うようにしています。
ただし、まだまだ、校内では定着していません。
・・・・と教えていただいた。
更に、いいなと感じたのは、澤田先生のメールの最後にあった以下の言葉である
”土台力は「少々の風雨では倒れない木の根」です。
感覚も重要ですので、「どこに行っても、時代が変わっても強く、たくましく、幸せに生きる力」とは
「強い木の根のこと」という注釈を土台力の木のポスターに入れたくなってきております。
久田先生とお話をしてもらってから、強く思うようになってきました。
そうすることで、「つくる」の中には、「失敗を恐れずにやってみる」が加わるように思えてきております。”
・・・・・というコメントである。

鳥取の青翔開智の理事長から以前いただいたメールで言われていた
「変化を恐れない,変化し続けることができる学校を創りたいと思っております。」ということと重なってきた。

前に向かい、変化することを楽しみ、自分たちが行ってきたことを振り返ることで、永続的に「学習する」ことができる学校。
即ち、永続的に伸び続けていく学校の重要な要件は、試行錯誤を繰り返し行いながら(未完成でもいい)、共有ビジョンに向かい果敢にチャレンジしていくことだという実感を深めた訪問となった。

感謝である。

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