神戸大学附属中等教育学校・・・「探求」報告

【エピローグ】

 2021年7月30日神戸大附属中等教育学校の探求に関する発表会がオンラインで催された。印象に残ったのは、さまざまな前向きな一連の試行錯誤を6年間行なったことである。神戸大学附属中等教育学校は、私が神戸で仕事をしている時に、長田高校から移られた、齋木先生との繋がりが大きい。齋木先生が副校長として、赴任された時から始まる。その時齋木先生に「筑駒みたいにしたいのですか」と聞いた時、「そうしたい」と言い切られた時は嬉しくなった。その後、地歴の高木先生の授業を見せていただき、そのデータサイエンスとも言える授業に、知り合いのそこにいた生徒は、後で「先生の授業は、集中力をもって考えないといけないから、終わったらクタクタになるんですよ。」と教えてくれた言葉が印象的だったのを覚えている。これが6年前のことである。今回は、この時の繋がりもありオンラインで参加することにした。あの時から6年かけて作り上げている様が見てとれた。「Kobe ポート・インテリジェンス・プロジェクト」=「KP」6年中高一貫の間に、卒業研究論文の質を上げるためのリサーチ・リテラシーの育成を目指すプログラムと仕掛け。これを作り上げる試行錯誤の過程である。

【課題研究入門:中1・2で行う探求】

ここでは、①基礎的スキルの習得②学年単位③講義・実習・講演会ということを行うが、ここでのポイントは、「問い」から「結論」に至るときに必ず「根拠」を明確にすることだ。これは、高槻高校でも行なっていた「対話型論証」にも似ている。「対話型論証」とは、簡単にいうと自分が主張し、結論に至る際に主張をする上での事実やデータを明確にし、論拠を明確にして結論に至るということである(京都大学の松下佳代先生の「対話型論証による学びのデザイン」)。

【課題研究:中3・高1・高2・高3で行う探求】

ここで特徴的なのは、一人1テーマで論文を意識すること(中3=4000字、高1=8000字、高2高3=18000字)を目指すことと、4学年合同の共同ゼミを実施する点である。異学年で共同して進める試みは、福山のイエナプラン校でも行なっているが、非常に有益な取り組みだと思う。ここでは、課題研究に取り組まれているが、先輩からのフィードバックを下級生は受け、先輩は、「探求作法」を身につけるという効果を産んでいる。異学年合同の常として、小集団による学習がここでも「議論して考えを深める時間」として効果発揮に一役買っている。こうかわる前までは、単純に各学年で年間を通して、完結するプログラムで行われていたものが、異学年で合同実施する形に変えたことにより、生徒・教員の有機的な繋がりを作り、教員の負担まで減っている。即ち、柔軟な教員と生徒の対応を生み出し、生徒たちが「卒業論文」を目標に自走するようになることで形作られている。ここで問題は、「論文」の評価を決めるルーブリックの作成である。ここでは、よく見られる事例と同じく、総論賛成、各論反対の議論である。即ち、論文の体裁と構造を整えよう、結論の説得力を高めようという総論は、教員間ですぐに合意したが、異なる研究分野間、異なる教員間でどう公平性を担保するかで行き詰まったのである。これは、いろんな学校で見られ、だからやめよう、この辺でお茶を濁そうという話はよく聞く。ここで原点に戻ったのが素晴らしかった。「生徒の能力を向上させることが第一」で、①そのために論文の質を向上させる②そのために指導と評価の一体化があるという考えを徹底させたのである。その結果、ルーブリックは、教員・生徒にとってのガイドラインと捉え明確になっていった。

【探求における観点評価、ルーブリック】

ここで「観点評価」が行われるようになるわけであるが、①中3以上の共通観点=「問題設定とその意義が明確か?」「問い→根拠→結論の論文の構造に整合性があるか?」「研究内容と題目が一致しているか?」②高1以上に求められる観点=「実験・調査手法や資料収集手法が適切か?」③こういう2・3において求められる観点=研究内容の新規性は、示されているか?」「得られた結果や情報の分析・考察が適切か?」と学年によって観点を増やしていくことにしたのである。「論文」を作るという目標に向けた観点としては、納得いくものである。卒業論文を書くことで、卒業するまでに自分が身につけるべき基準を生徒と教員が明確に共有していくことは、力をつけられなかったけど次は大学に行って頑張れ、大学で身につけられなかったら社会に出て頑張れ、というような先送りを長いことやってき今の日本の学校において、一番不足しているところである。

【通常授業における観点評価、ルーブリック】

こうした、観点別の評価基準を探求だけでなく通常授業において実施しようとしているのが、東京ドルトンで行われている。ここで行われている観点は、①知識②処理③思考力④主体性であった。この観点を(1)要点整理(2)小テスト(3)単元テスト(4)問題集(5)レポート(6)グループワーク(7)任意課題のそれぞれの場面で適用している。こうした観点とルーブリックの設定は、学校が目指すビジョンと大きく関わっている。しかもそれを教員と生徒が共有して話し合いながらすることが必要である。これをしないと保護者も生徒も不安になるからである。保護者にもこうした学校のスタンス評価基準・観点をきちんと伝え、理解を得ることは不可欠なことである。その上で、「今日、〇〇くんは、すごい成果を出したんですよ」というようなことを保護者に伝えると、教員・学校・保護者に信頼が生まれる。なぜなら保護者は、「学校のビジョンが見え」、「その達成のために今、こういうことを先生はしてくれていて」、その結果「子供が成長しているということ」を、その子の成長を願う大人(教員・保護者)が互いに喜びを共有できる瞬間を生み出すからである

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