東京都杉並区「井荻小学校」の素晴らしい取り組みに接して
【杉並区は地域で仕組みができている(運営業務本部)】
自治体の新しい仕組み作りの一つとして、苫野一徳さんリヒテルズ直子さん共著「公教育で社会をつくる」の中で、大改革とまでしなくともできる画期的な取り組みとして
苫野一徳さんが紹介されていたものである。
その本を読み終わったばかりの時に、護国寺の国際フォーラムの鈴木律子さんから杉並区で画期的な取り組みがあって、「行きたければいつでも繋ぎますよ!」と紹介された。
「それはこの本にあるこれのことですか?」と驚いたところから始まった。彼女は、そこの井荻小学校の外部メンバーの一人である。
その時、鈴木さんが言った「そこにいた知り合いが最近広島の大崎上島に移住してね・・・」と聞いて・・・「大崎上島?!」「最近移住!?」「もしかして、それ賀川一枝さんですか?」
鈴木さん「そうですよ!」
「瀬戸内グローバルアカデミーで、その方の作ったパンをいただきましたよ!」と互いに驚いたのであった。賀川さんといえば、生協の父賀川豊彦を思い出すが、
世の中不思議なものだと思った。世の中が狭いのか?引き合うもの同士はこうやってつながっていくのか?!・・・などと思わずにいられなかった。
そして、いよいよ念願叶っての訪問へとつながる。
【東京都杉並区の仕組み】
杉並区ではこれを単なる自治ではなく「共治」と呼ぶ。
即ち、「学校」「地域学校協創本部」→「学校運営協議会」→「教育委員会」という流れを仕組みとして作っている。
地域住民が、より当事者性を発揮できる「教育自治」ということである。
学校や子供たちの成長、地域の未来を考え行動し続けている人達から教育委員を選出していく。
即ち、杉並区内の学校(コミュニティスクール)における学校運営協議会とは別の「学校支援本部」が地域住民のボランティアを派遣する。
学校支援本部の中には、学習や部活動、学校行事の支援、安全パトロール等があり
杉並区全体で、支援本部員:600人、外部サポーター:1400人もいる
こうした人たちが、子供の成長に何らかの形で日々関わる。そして、この地域学校協働本部を教育委員選出の足場にするのである。
🔳地域学校共同本部の人たちの互選または、推薦によって
↓
🔳コミュニティスクールの学校運営協議員を選出
↓
🔳学校運営協議会から1名ずつ教育委員の候補者を選出
↓
🔳その候補者たちが議会の同意を得て、
↓
🔳首長によって教育委員に任命という構成をとっているのである。
このことで、学校や子供たちの実情を知る人たちがより説得的な意見を述べられる仕組みになっている。
地域に根ざした教育委員の存在は、教育委員会の閉鎖性を打ち破り、真に住民に開かれた教育行政を実現できる。
「自分たち(教師・子供たち・保護者・地域の人たち)の学校は自分たちでつくる」市民社会における学校。対等な立場で学校を作りあう。これこそがいわゆる「共治」なのである。
【井荻小学校訪問】
2023年10月19日
鈴木さんと共に杉並区西荻窪にあるの井荻小学校に向かう。
学校の中を流れる善福寺川等を鈴木さんの案内で見ながら、
井荻小学校map
小学校に到着すると校長室にいきなり通される。
そこには、田中裕次校長、井荻小学校支援本部「いおぎ丸」の岩渕晴子さんと中谷理彩子さんそして住谷陽子先生
・校長は、
「ここに来たらここのやり方でないとやっていけない」が文化?「私たちは開きっぱなしです」と言って笑われていた。
ここの学校支援本部「いおぎ丸」は何と言っても、岩渕さん中谷さんの二人が、メインである。
いおぎ丸は非常に組織的に動いており、このお二人が全てを動かしているというわけではない。
組織としては
①学習支援部:体験活動や特別授業のゲストティーチヤーを招きます。野鳥観察会や川の調査もその一つ。
②健全育成部:朝あそび、オヤジの会、いおぎ土曜クラブ、安全パトロール隊等校庭にそびえるメタセコイヤのように子供たちを見守ります。
③環境部(のら部、しば部):花壇の手入れはもちろんのこと、近隣の人にも人気の良質な腐葉土も作っています。意義技小学校は、植物の宝庫
④図書部:本を愛するメンバーが集まって、本の貸し出し、図書修理、本の展示や読み聞かせを行います。
⑤広報部:膨大ないおぎ丸の活動を、「いおぎ丸だより」の形で伝えています。ホームページにも情報をアップ。
の5つに分かれていてそれぞれの部が組織的に結びついているのである。
実にその内容は機能的である。
子供が中心にいて、その周りを地域の人々が支えている。
普通に考えると、保護者が多いのかと思いきや、中谷さんでさえお子さんは、24歳で既に保護者ではない。
井荻小学校のいおぎ丸の場合、まとめてくれた資料を見ると保護者:149名、地域の人:218名と保護者より遥かに多くの地域の人々が関わっている。
朝遊びも、保護者:11名、地域の方々:20名とほぼ倍の方が地域の人々である。
その中でも
特に授業サポーターは、73名もおり、全員が地域の人たちなのである。
他の部を遥かに凌ぐ年間73個の催しをやっているだけのことはある。
改めてこの地域の人々の関わり方は凄いと思った。
そこで岩渕さん中谷さんに、「その情熱的にされている様子は伝わりましたが、何が楽しくて、何を一番感じてこの仕事をされているんですか?」
と聞くと、
傍におられた田中校長が「僕もそれをずっと聞きたかったんだ!」「ただ聞いてしまうと、それであなたたちが辞めてしまうのではないかと怖くて聞けなかった。」
と仰っていた。
お二人によると
子供達との関わりということで、「やりがい」を感じるということと、もう一つはここは自分たちの「ふるさと」だと思っているとのお答えだった。
「ここって、東京とは思えないでしょう?」と言われるのも大きな要因であろう。
そこへ、「今日は福山から訪ねて来られ人がいると聞いてきました!」「私も福山出身なので!」と元気がよく愛嬌がある住谷先生が登場された。
住谷先生は、通常職員室におられ、新任の先生等が来られた際、「あなたはそれは何のためにそれをされているんですか?」などと指摘され
教育の本質をつく話をさまざまお聞きした。本質をよくわかられた方であった。
そこで
すかさず岩渕・中谷両名が、口を合わせて、この住谷先生がおられるから、私たちも安心して仕事ができると仰っていた。
今日の話をお聞いているうちに、ここにいる4人(職員室にいる住谷さん、いおぎ丸の岩渕さん中谷さん、そしてそれを「いいねえ」と支える田中校長先生)が、
まさにキーマンなんだなということを感じた。
その証拠に、その後、「隣の中学でさえ、別の小学校と比べても、ここ井荻小学校は、熱量が違う!」と田中校長先生が言われたことからもわかる。
杉並区としては、同じ仕組みをとっているものの、そこに関わる人によってその熱さはずいぶん違い、それが学校のカラーを作り出している。
田中校長先生の「うちは他と比べると、クレイジーなくらいやってますね。それがエネルギーを産んでいますし、大人の熱量が子供達にも伝わっています。」「やっぱり人ですよ」
というセリフが、印象的であった。
【善福寺川風土記・野鳥観察ノート・善福寺川ノート】
善福寺川
井荻小学校の中を善福寺川が流れている。そこを土台としてこの三つの冊子が存在した。
善福寺川の歴史を知って(善福寺川風土記)、そこにいる鳥を観察し(野鳥観察ノート)、川が持つ生態系から調べ、考え、表現しよう(善福寺川ノート)というわけである。
これらの冊子はなかなか充実していて、学校にある川を通してそれが自分たちの故郷の源泉にもなるというようなものが見えてくる。
長年かけて今のような形に変化してきたそうである。
中谷さんが言った「これを学んだ子たちが、十分学べる素材となっているし身につけられると思う。」「もし、あまり学べない子がいたとしても、川にゴミを捨てるような子は一人もいないと信じている。」
という言葉に感動した。
東京都は、1964年のオリンピックでほとんどの川に蓋をしてしまった。その後、東京は汚水を川に流し、結果的にヘドロの海を生み出した。
そして改良が進んだが、善福寺川は、水量が少なくなっていて定期的に水量を雨水を集めて流している。そこにも小学校の(大人と子供の)活動が生きている。
本当に助け合っていくと、「ふるさとを守ろう」という意識が強くなっても当然だと感じた。
こうやって、作っていく「地域」が持つものは何かということを考えさせられたのと同時に、鈴木律子さんのような地域外の人まで巻き込んでいる魅力を感じてしまった。
そして、話を聞いていた私までも何とも言えない「幸せな気分」のままで帰途に着いた。
幸せな気分で、西荻窪の駅で飲んだクラフトビールで、鈴木さんと最高の乾杯ができた。
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