新渡戸文化学園 「理想の教科書とは?」に1日参加
2023年2月20日
新渡戸文化学園の山本先生主催の理想の教科書とは何か?を中学高校生が考える。イベントに一日中参加して中高生と話した日であった。
このイベントは、教科書を自身が描かれている先生が、教員と教科書会社との間で話をし中身を決定し、全国へ出版する。
この過程で「一体教科書は誰のために書いているのか?」「子どもたちにとっての良い教科書言えるのか?」という疑問からその問いかけを、生徒たちに投げかけ、そのテーマでの探究発表だった。
参加者は、全国の先生方、教育関係者および教科書会社(探究対象とした教科書を発行している三省堂)であり、生徒達もその人達に向けて発表し質問にも答えるという環境設定の上である。
まず何よりこの教員からの素朴な疑問ということが、如何にもということと、今の日本の教科書制度自体に対する疑問があったので、参加を決めた。
朝9時に新渡戸文化学園に到着。
いきなり、「久田さんですよね」と横浜創英中高の横井秀郎先生に声をかけられる。先生のコメントに私が、「新渡戸文化学園に行きます!」と投稿していてそれにより知った。とのことであった。初めてお会いしたが、おかげで会場でさまざまな話をすることができ嬉しい1日の始まりとなった。とてもありがたかった。
会場に行く。
【高校生】
ホワイトボードに高校生が発表準備のために色々書き込むところからであった。その間大人たちが後ろで待機。
準備完了ということで、各グループの話を聴きに行く。
いくつかのグループの話を聞いて、話をして、視点はさまざまであったが、共通しているところも色々あった。
共通している部分として、この教科書の単元を開くと、まずやる気が出ないということであった。
要素としては、
1)イラストが古くて、目を惹かない。アピールしてこない。なんの為のイラストか?
2)左にイラスト右に英語の文章この構成自体が嫌になる。
3)大切なことのポイントをまず図を使うなりして示してほしい。
4)核心部分が、次のページを捲らないと出てこない。
5)問題等はいらない。何をここで学ぶかということをメインにして欲しい
6)開いた時のイラストも右のページの英文も、現実的でない設定が多すぎて現実世界とかけ離れ過ぎている。無理やり感が否めない
等が共通して上がっていたところである。
①情報収集、分析をしたうえでの仮定設定の経験をできていることがとても素晴らしい。
②その上で訴求できるように工夫しているので、これまでの日本の教育にはない「他人にわかりやすく伝えるためのスキルの醸成」が期待できる。
この2点を意識しながら教科書会社や他校の先生に「自分たちが『世界』を変える」というモチベーションでプレゼンしている生徒たちの未来が伝わってきた。
具体的には以下のような提案がなされた。
■イラストをアニメのようにリアル感がある形にしたいというもの
■映画を使う。映画を使うにしても、何をそこでマスターするかによって題材を変えるというアイデアや
■日常会話をできるようなる目的の設定をしたり、
■興味をそそるための工夫を盛りこんだりするための工夫(バーコードをつける・つけないここは意見が分かれていた。)
など自分たちが前向きに頑張れるような、目的に沿った明確な構成、現実的な事例が目白押しであった。
やはり、今の教科書は、何を盛り込むかありきで作っていて、それに辻褄を合わせている作り自体をしていることを生徒たちは見抜いていた。
しかも、10年〜29年以上も前の素材を使い回している現状が浮き彫りになっていた。
午後お昼ご飯を売りにこられていた弁当を購入し、岩国総合高校の先生と一緒に地下の食堂で食べる
【中学生】
その後、今度は、中学生の発表を地下のホールで聴く
中学生は、高校生よりもよりバラエティに富んだ形であった。
しかし、やはり、高校生と同様、現実にあっていない、やる気が出ないという感想は同じであり
中でも一番すごかった発表は、
5〜6人で作った班で、やはり現実感がなさすぎて、男と女が出会ってすぐ仲良くなって会話するなんてありえない。
だったら「自分たちでストーリーを創ろう」という班であった。
ロジックをつくってストーリーも考え、役割分担を明確にして、「世界を変える」ための資料を作れているのには、
チームとしての成熟度もコミュニケーション能力、そして自分たちの未来への正確な状況把握など、様々な能力が育成されているのではないかと感じた。
【中学生が作った内容】
目標設定:
①変更したいこと
②自分たちが作ったストーリー
③この教科書の授業を受けて自分たちはどうなりたいか
この3つの設定が明確。
1)変更したいこととしては、5つ
・単語の覚えやすさ・・・・・単元ごとの単語をまとめたページが欲しい
・スピーキング力強化
・コラムページ
・デジタル化
・ストーリーについて
2)ストーリーについては、名称も「our dreams」
登場人物たちのキャラクターも、Emily Hans Benの3名を設定していて、男の子2人がEmilyに好意を抱いているという設定である。イラストまで作っている。
第一章が、「自分たちの未来について」から始まる
第二章が、「多くの職業」
第三章が、「consultation」
第四章が、「自分の夢についてのスピーチ」
第五章が、「卒業式」
となっていた。
そして、
3)この教科書の授業を受けて自分たちはどうなりたいか
・英文法、単語を楽しみながらしっかり理解して、苦手意識をなくしたい。ALTの先生と会話を楽しみたい。
・好きなものと英語を掛け合わせて自主的に楽しく学びたい。英語を使ってさまざまなことを発信したい。
・動画やプレゼンなどを組み合わせて、グループワークできる英語を学やり方で、外国の人と親しくなりたい。
の三つで、「具体的かつ明確」であると言える。
その上で、最後に「理想の教科書を受けてなりたい自分」についても
・理想の教科書で学んで、言語の壁を壊して、人種や住んでいる場所を問わずにつながりを広げたい!
・教科書で楽しく学べるようにして、英語学習を遊び感覚でやりたい!
ここまで明確な意図と、なりたい自分も重なり合わせて、企画・内容検討をしている。
あまりにも見事で、つい「君たちこの構想で作ったもので、みんなに授業できるよね!」と感想を伝えた。
4)そのほか、デクレシアスの男の子
彼がよってきて話を聞いて欲しいと言ってきた。
彼は、国語ができす、日本語の読み書きができない。「漢字は諦めました」「変換してなんとなくでOKとしています。」とのこと
しかし、英語は読み書きできるという。「自分が興味を持った武器や、ロケットなどの取扱説明書などの英語をつい真剣に読んでしまいます。と言っていた。」
その子は、自分のこうした特性を活かした教科書というよりも、モノの開発を提案していて、それを使った世界を展開してくれた。
活き活き話す、彼の話につい引き込まれてしまった。
この1日を通して、高校生や中学生と英語というものを通して、
共に考えられることや、広がる世界について、話しと問いをなげかけた。
話がどんどん広がり互いに新しい世界が開けることに、ワクワクしっぱなしの1日を過ごすことができた。
こんなに楽しい日は、久しぶりであった。
子どもたちの発想や、明確な意思、そしてそれを受け止める大人たちという環境は、やはり学校に必要なことだと思う。
5)最後に、参加の大人たちが別教室に集まり振り返り会
一様に、生徒たちから刺激を受けた大人たちが自分が感じたことや思ったことを共有し合う会であった。
まず、やはりここで聞いたことで、衝撃だったのは、
①教科書自体が20年以上も前の素材を使い回しているという現実。
②教科書の編集者と営業とは考えることが違うということ。
だった。
そりゃ、書いている先生も自分で疑問を持つわけだ。「誰のために書いているかわからなくなる」という発言さえあった。
しかし、よくよく聴くと、本当に教科書が本来的に必要なものなのだろうか?という疑問が湧いてくる。
教員の単元の本質を含めたテーマ設定や、本質的な問いかけがあれば、授業は成り立ち、教室にそのための資料があればそれでいいのではないか?
全国のさまざまなニーズに応えるために、融通が効かずに盛り込み主義のような教科書しか作れず、それを全国に販売することで利益を生む教科書会社。
この仕組み自体の歪みが浮き彫りになった1日であった。
都道府県に教科書発注部数を確認するために、
ろくな指導もなされずになされる、全国の高校で1年生の終わりに「君は文系か理系か」を聴くアンケートの理不尽さについても考えてしまった。
ほとんどの子達が、「僕は、数学が苦手だから文系」と言ってしまう。
自分は何に興味がある。を後回しにしてである。
最も、大きな問題は、大学入試に合わせた学校のカリキュラムが問題かもしれないが
この教科書の作り方、使い方自体もこの問題に多くの影を落としていると、感じずにはいれなかった。
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