命令形→問いかける、問を立てるへ
現在多くの学校で見られる生徒への指示は、「命令形」が多い。これは、生徒の思考停止を産み出していないだろうか。例えば、生徒が「教科書忘れました。」と言った場合、よくある光景としては先生が「あそこの棚に予備があるから持って来い」とか「隣の人に見せてもらえ」などと命令形で指示を出す場面が見られる。先生の指示を待ち、指示にしたがっておけば何とか怒られなくてすみ、何とかなると思った子は折角の思考する機会を奪われていないだろうか。大空小学校の木村先生のように「あら、忘れたのそれは大変だね。どうしようか?」などと疑問形で問いかけるだけでも、生徒は、自分のことととして物事を捉え、考えることができる。生徒は自分のこととして色々考え始める。
また、この場面で「どこかに予備とかありませんか?」「誰かに借りられませんか?」「隣の人に見せてもらってもいいですか?」と自由に発想し疑問や提案を出せるようであればまだいいが、モジモジして怒られるかもと言うのを感じ取って、提案や疑問も出せない環境設定になっている場合は、これはその場面だけでなく、授業や行事の中でも同じ反応をしてしまう子が多くなってしまうのではないだろうか。
こうした命令形の指示は、特に全体への指示の場合、余計に出やすいように感じる。そこに、なぜそれが必要か大切かというメッセージもなく命令形。しまいには、「私の言うことを聞きなさい」という指導にまでつながってしまう。通常、人と人とのコミュニケーションを取る場合、必ず意見とともにその理由や想いを伝えることで、意図を理解してもらうはずである。学校現場で特にその部分が飛んでしまっている場面が多く見られるのは、なぜであろうか。部活動でも同じことが言える。試合に勝つためには、「俺の言う通りにしておけばいいんだ、それに従わない奴は、罰として腕立て伏せ」と怒鳴りつける。これでは、部活動の意味がない。部活動を生徒が問いを立て、考え、議論して試す場とすることで、スポーツや文化活動等についてどうしたらうまくなれるだろう?どうしたら、うまくチームワークよく取り組めるだろうか?を自分のこととして考えられるかが重要であり、こうしたアクティブラーニングを教員は支援・伴走しながら、どうしたら生徒の主体性を引き出せるか?どのような支援が効果的か?を生徒と共に学んでいく場でありたいものである。怒鳴りつける指導を否定している益子直美さんも、高校時代の怒鳴りつけられるバレーボールでは、萎縮して、怒られないようにしようと先生の顔色ばかりを見てしまっていたと言われていた。
ある学校に講演でお伺いした時も見かけた。私が紹介されて今から講演が始まりますという段になって、生徒たちが各々ずっと喋っている。明らかに聴く意図が窺えない。そこで困った先生がよくやられるのが、「おいそこ喋るな!」「静かにしないと後で懲罰だぞ!」怖い先生ということになると、大人しくなるケースもある。しかし、何だか悲しい気持ちになってしまう。ああ、この先生が軍隊のように劇を飛ばして怖そうだから、この先生の言うとおり、この場だけ大人しくしていればいいと思って聞いているんだろうな・・・・そうでないと、いつもはみんな喋っていたりするのを繰り返すんだろうな・・・・と悲しく感じてしまうのである。
上記の講演の例の場合であれば、事前に何のために、どのような目的でやってもらい、そこには自分が教員として何を大切にしているかを人の感性として生徒に伝えていない場合が多い気がする。しかし、もし「おいそこ喋るな!」「静かにしないと後で懲罰だぞ!」と先生が言っているにもかかわらず生徒が喋り続けたら・・・人によっては、暴力に訴える人も出てくるのではないかと不安になってくる。
授業でも同様で、自分のこととして思考することを促していくアクティブラーニングにおいてもその真剣かつ間違えたことを発言してもいいと言う環境設定。そしてそれを行う上での作法を身につけさせることは、重要であるがもう一つ重要な車の両輪は、生徒がハッとして、自分のこととして捉え考え始める「問い」をいかに発することができるかにかかっている。この問いをどう立てるかによって生徒は変わる。更にその先に何が考えられるかまで、考えが至る場合も出てくる。生徒が、自分のこととして興味を持ち、自発的な行動を起こせるような「問い」をいかに立てるか?がこれからの指導には、不可欠なものではないかと切に思う。
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