遠藤洋路 熊本市教育長 ”みんなの「今」を幸せにする学校”を読んで・・・

遠藤洋路さんの本が出たので、早速購入し読んだ。一言で言うと「遠藤さんの思いと、腹の据え具合が手に取るように表現されている本である」

熊本市の教育ビジョンが明確にかつ、分かりやすく書かれている。

そこには、「豊かな人生とよりよい社会を創造するために、自ら考え主体的に行動できる人を育む」という教育理念が最後まで貫かれている。

知徳体では片手落ち、人の人格を極めるというようなことが、教育基本法にあるが、じゃあ、

不完全な人間は幸せになってはいけないのか?
人格の完成ができなくても当たり前(自分も含めて)。
自分の優れた部分を生かして幸せになり社会に貢献できればいい!
よりよい社会を作るための教育という視点が欠けている!
均質な社会では対応できる幅が狭くなる!
というように真っ向から、教育ビジョンの重要性を説かれている。

この話の中で、70年前に中学生向けに書かれた「あたらしい憲法の話」の引用には、改めて昔から大切なことをちゃんと言ってるじゃないかと思わされた。

「いまのうちに、よく勉強して、国を治めることや、憲法のことなどを、よく知っておいてください。もうすぐみなさんも、おにいさんや、おねえさんと一緒に、国のことを、じぶんで決めていけることができるのです。みなさんの考えと働きで国が治まっていくのです。みんながなかよくじぶんで、じぶんの国のことをやってゆくくらいたのしいことはありません。これが民主主義というのです。

だからこそ、校則も「自分たちで自分たちの社会を創る」一つなのだとその展開は明確で、熊本市管理規則にその意図を以下のように定める

•学校の意思決定に子どもが参加できる法制化をおこなって、明確に定めているのである。

「校長は、必要かつ合理的な範囲内で校則その他学校規定を制定することができる。」「校長は、校則の制定又は改廃に教職員、児童生徒及び保護者を参画させるとともに、校則を公表するものとする」(2021年熊本市制定)
しかもその校則については、人権、人の命、犯罪に関わるものなど必ず改定すべきガイドも明確に示している。
①生まれ持った性質に対して許可が必要な規定
②男女の区別により、性の多様性を尊重できない規定
③健康上の問題を生じさせる恐れのある規定
④合理的な理由を説明できない規定
⑤人によって、恣意的に解釈されるような曖昧な規定

ここでもう一つ、上記「あたらしい憲法の話」と同様、全国の先生方が、えっ!と思われる「生徒指導とは」に関わる引用がある。
これは、私もオンライン勉強会で出したものだが、「生徒指導の3機能」として文科省が出しているものである。
【生徒指導提要】
①児童生徒に自己存在感を与える
②共感的な人間関係を育成すること
③自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助すること

このことは、現在先生方がイメージする「生徒指導」のイメージと、かなり異なるのではないだろうか。遠藤さんも同じことを言われている。

さらにさらに圧巻は

民主主義の担い手のために「社会に出たら大変だぞ」は止めよう!と言われ
【こんな言い方に変えよう】と言われているところだ!
※民主主義が揺らいでいる時代だからこそ、これまで以上に確固たる民主主義の担い手を育てる必要があるということなのだ。

•「申し訳ない。私たちがいい社会を作れていないので、社会に出たら大変だよ。」
•「一緒により良い社会を創ろう」
•「私たちには無理でも、君たちが改善してくれよ」
その後ICTを100万都市の自治体としていち早く導入した熊本市らしく、その中で得た知見をすぐに、
不登校対応にも実践として活かそうとしている姿勢が見事に出てくる・・。

こうした一連の中で、他の地区にもその波及が見られる。最近では、岡崎市の不登校に対する以下のような取り組みに
形だけではない対応が、少しづつ日本全国に広がってきていることを感じる。

岡崎市教育委員会 F組(Fit、Free、Fun、Futureの頭文字を取った)【5つの理念】
1:適応するのは生徒ではなく学校。学校に適応できるようにする適応指導教室ではない
2:通常学級と同じ、1つの学級として扱う
3:多様性を受け入れられる、校内でも信頼の厚いエース級の教員を担任に置く
4:いつでも生徒たちを温かく迎える支援員を配置(市の予算で採用)
5:教室復帰ではなく社会的自立を目指す
役割のイメージとしては、F組の担任が活動や学習のコーディネーターで、支援員がファシリテーター、そのほかの教員はエスコートランナー。そして随時、スクールカウンセラーや養護教諭がサポートに入る。「少予算かつ少人員をこうした『チーム学校』の力でカバーし、F組という温かい居場所づくりをしているのが岡崎市スタイル」

1番と5番は最高である。また、2番も素敵である。3番は、福山市で多く行われている校内フリースクールを参考にされたとも言われている。全国で19万人もいる不登校の生徒に対し、教室へ復帰させることを目的としているような対応とは、真っ向から反対する動きであり、賞賛に値する。しかも、このF組にきた子たちは、自分の時間割を自分達で作って学ぶのである。こんなF組が学校全部になってもいいのではないかと思う。

ここで岡崎市も「岡崎市スタイル」と言っているが、熊本市も「熊本市モデル」といい、全国や世界に発信し、広げようとしている。全国の他の自治体にもこうした、熊本市モデル・岡崎市スタイルにあたるものをより広げていけたら、必ず日本全体の教育は、大きく変わっていけるという確信を得た。

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