関西学院千里国際中学・高等学校を訪問して・・・

 11月26日、関西学院千里国際中学高校に、米田謙三先生をお訪ねする。米田先生は、アクティブラーニング学会の会長さんでもある。アクティブラーニング学会のオンラインセミナーでお話しし、その後メールでやりとりののちの訪問となった。

 生徒たちが、校舎前の落ち葉掃除をする様を見ながらの訪問であったが、落ち葉掃除も楽しそうにやっていた。来年度入学志望の保護者の方と一緒に中へ入る。まず目に飛び込んできたのが、外国人の子供達が楽しげに行き交う様である。校舎から中庭に向けて走って行っている。その次に目に飛び込んできたのが、校舎の真ん中にある円筒形のガラス張りで作られた図書館である。中では、多くの生徒たちがパソコンを開き作業する様や議論する姿であった。米田先生を待っている間、警備員の方が来訪の外国の金髪の女性と英語で親しく話している。何だか普通の学校の雰囲気とは違う。米田先生によると、「自分もそうだが前任校では、英語を教えていたが、その時よりも今、この学校で社会を教えているが、英語を使う頻度は、こちらが圧倒的に多い」という。警部員も英語は不可欠で、学校全体の共有語の一つになっているそうだ。

 ここの校舎は、千里国際中学高校の他に大阪インターナショナルスクールが合体した建物である。千里国際の中学高校の生徒構成は、帰国子女・外国人・一般の生徒がそれぞれ3分の1づつ在籍し、春のシーズン前半(1月半ば〜4月半ば)春のシーズン後半(4月半ば〜6月)秋のシーズン前半(9月〜10月半ば)秋のシーズン後半(10月半ば〜12月半ば)に期間が分かれている。このような期間設定は、外国人・帰国子女を時期ごとに受け入れることができるシステムになっているからでもある。驚いたことは、このシーズンに合わせて運動部系の部活設定がなされていることである。そして例えば、春の前半のシーズンでサッカーをやり→春の後半は、ソフトボール→バレーボールとどんどん部活の競技が変わっていくことである。まさにアメリカ流と言える。それが故に、中体連・高体連には所属できないが、インターナショナルスクールのリーグ(AISA)西日本アスレチックアソシエーション(WJAA)に所属している。しかし働き方改革のネックと言われる部活動がその要因には全くなっていない。

 授業は、中学では、中学3年間に一条校として履修すべき科目、オリジナルの科目、インターナショナルスクールでやっているIBの科目を自由に選んで受けることになる。大学の履修届の感じである。よって、講座ごとには、中学1年生から中学3年生までが入り乱れて受講することになる。しかもひと講座の人数は、全て25人以下である。高校も同じ仕組みである。

 いくつかの授業を見学した。まず、中1の授業で「論文」の書き方という授業があった。米田先生は、「論文の書き方の基本が中学1では、わかっていませんからね」という。そこで私が「もしかしてこれは、海外の大学に必要なエッセイの対策も兼ねているんですか?」と聞くと「仰る通りです」とのお答え。この学校の進学先が、在籍ひと学年100名のうち、半分が関西学院大学(一番多いのは、国際)残りの半分が国内の国公立や私立と海外の大学が占めているからである。

 次に、高校の授業を見る。日本史であった。ここも高1〜高3まで入り乱れて受講している。授業では、評価の基準が明確に示されていた。この講座を受けるのが1回目の人は、このようにテストの評価が一番高い(60%)とか、2回受ける人、3回受ける人の評価脳ウェイトは、こう評価の割合が変わってきます。と回数が増えるほど求められるものが知識からその応用へとシフトされているのがよく分かる。こうした説明が明確になされ、生徒は真剣に聞いていた。自分がどこに力点を置いてこの授業を受ければいいかが明確になるわけである。それは、受講者一人一人違うわけである。・・・教員もひとりひとりの評価をすると同時に、生徒も自己評価しやすくなる仕組みの一つという気がした。どの授業を見ても、一様に感じるのは、「生徒の真剣さ」である。やはり、シーズン制でランダムに受講講座を選び、それぞれの授業が短期集中講座のようになっていて、それぞれ評価・単位につながっているため、取り組み姿勢が変わってくるんだと思った。年間単位でこれだけ学ぶといったことしかない、通常の日本の学校のやり方とは、取り組み姿勢に大きな違いが出てくるんだと思った。また、ひとつの講座人数が25人以下という環境も一人一人を見ていく上で大きく影響していると思った。
人工芝の上で体育をやっている子たちが、みんな小脇にファイルを抱えていた。自分が行ったこと、そこからどうすれば、次のステップに進めるかの記録用だという。いわゆる「考える体育」を実践していた。

 探求科は、新しく福岡から転勤してこられた先生が中心となって勧められていた。中学での目標が「知的好奇心の発掘」がテーマになっていて、高校ではそれを発展させるという方向である。実施期間は、今のところ「夏休み」と「秋学期」に限られており、始まったばかりというのも伺える。しかし、そこに異教科(社会・理科・数学・情報・英語・国語)が協力して作り上げようとする姿勢が明確に見えるのは素晴らしいと感じた。

こうして、一人ひとりの時間割が違うため、学校の真ん中にある図書館が、自分の授業待ちの間に自習コーナーで、一人で勉強したり、黙々とパソコンと睨み合ったり、友達と議論している場所(ベンチに横になっている子もいる)になっている。「学校の真ん中に図書館があるという配置は、いろんな学校で真似されているんですよ。」と米田先生。そういえば、東京ドルトンも鳥取の青翔開智もそうだったなあというのを思い出した。ここで、一つ気がつく。どの生徒の服装も髪型も髪の色も化粧もバラバラである。かといって、全然違和感を感じないのである。校則は全く無く、「5つのRESPECT」があるだけである。

「5つのRESPECT」とは、
①自分を大切にする
②他の人を大切にする
③学習を大切にする
④環境を大切にする
⑤リーダシップを大切にする
である。

これは、児童・生徒・教職員、すべてのスタッフの判断基準・行動指針としている。言葉としてやや抽象的な文言も伺えるが、これらをひとつの「リスペクト」としているところがポイントだと感じた。日本の学校では、こうした学校の判断基準・行動指針を具体的に言語化して示しているところは、まだまだ少ない。米田先生ともこの辺の議論をしたのだが、こうした、「学校の共有ビジョン」が明確で具体的でないことが、そこに向かって全スタッフが協働しにくい要因となっている。現場レベルで教員同士の協働こそが、多様性に溢れた生徒たちに対しての対応では不可欠であると・・・千里国際では、これが、学校の仕組み・構成とも相待って意識せざるを得なくなっているところが、良い効果を生んでいるものと感じた。

 これは、たまたまであるが、千里国際から帰ってきた翌日の夜、オンラインセミナー「留学フェローシップ(知り合いの佐藤貴明先生がやっておられる)でヨーロッパの大学を知ろう」というテーマであったので参加した。少し遅れて参加したので、ゲストの藤戸美紀さんの自己紹介を聞かずに参加していた。ハンガリーの聞きなれない大学(University of Debrecen)の医学部に行った大学3年生で自分で道を調べ、日本・アメリカ・ハンガリーと探し、「自分がやりたいことが一番できるところに決めた」ということをやり「日本の医学部に入れないからハンガリーの大学と考えるくらいの覚悟では、進級できなくなるし、続かないと思います」と明確に断言していて、感心した。今後の自分の進路についても明確なビジョンを描いていた。ここでハタと気づき、聞きなれない大学に日本から、、、そこで、千里国際でいただいた合格実績一覧(一人ひとりの行先で示してある。のべ数ではない)を見てると、2018年3年前にこの聞きなれない大学に1名行っているではないか!そこで、オンラインセミナー主催の佐藤先生に、「もしかして、あのハンガリーの医学部3年生の子は、関西学院千里国際出身者じゃないですか?」と聞くと「そうですよ」とのお答え。なんと、昨日行ってきた学校出身の子に会えて、2度感激した!あんな子が育つんだ!と一人感激していた。

最後に、学校が大切にしているものとして、音楽とアートが挙げられる。校舎のいろんなところに作品が展示してあり、演奏用のホール設備が整っていた。楽器庫には、多数の楽器が収納されていたが、これは、いろんな楽器を体験したいという子のために、学校が貸し出すものも少しあるが、自分で買ったものがほとんどで、それを置いておけるようになっているらしい。こうした風土がもっと「探求」とつながってくると面白くなりそうだな等と感じながら見させていただいた。

全体としての印象は、素敵な学校だったということだ。米田先生から聞いたが、校内の生徒アンケートは、非常に、ストレートでとても参考になるということであった。うちの子たちは「沈黙は金」などという文化とは無縁ですね。とも言われていた。これはとても良いことだと思う。生徒が、自分の考えを堂々と相手に伝えると、大人も相手を子供として話さず、一人の大人として扱うようになるからである。日本中にいや、世界に向けて論拠を持って説得的に意見を述べられるような、第二のグレタ・ツンベリさんが産まれそうな学校だとも感じた。まだまだ課題もありそうではあるが、今後は、その他の日本の大学も、海外の大学も、関西学院大学へも国際だけでなく理系進学がより増えていくと、一層抜ける感じの学校になれる可能性を大いに感じた。

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